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日本精神分析的自己心理学研究グループ
The Japanese Forum for Psychoanalytic Self Psychology

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               精神分析的自己心理学について  

 精神分析的自己心理学は、近年飛躍的な発展を遂げています。Kohutが自己心理学と呼ばれる理論体系を確立してから、さまざまな自己心理学者が他の多くの精神分析理論の影響を受けながら発展させてきました。現代の自己心理学は、Kohutのもともとの理論を越えて多くの考え方に広がっていますが、ここではそのような自己心理学的理論のもととなっているKohut理論の概略を説明します。なお、以下の内容は、TRISP自己心理学研究所による自己心理学の説明から許可を得て、翻訳、転載したものです。

 Heinz Kohut (1913-1981)によって創始された精神分析的自己心理学は、三つの中核的考え方に基づいています。第一の考え方は、精神分析の歴史における抜本的な変革となるものです。Kohutは、個人の自己体験を精神分析的探索の中核に位置づけ、それによって、欲動、自我、対象、対象関係のような、時代に合わない概念を排除しました。Kohutによれば、愛する力や、活力や共感、ユーモア、英知を持って生きていくための力にかかわる個人の心理的健康は、その人の「自己感」によって決定されます。個人が、自分が達成したさまざまなことから誇りや喜びの感覚を得ることができるかどうか、親密な関係性を作ったり維持したりすることができるかどうか、あるいは、人生を生き抜いていく中で体験する避けられない挫折や喪失に関する喪の作業をすることができるかどうかは、全て自己の状態によって決定されます。

 第二の中核的な考え方は、自己対象体験と呼ばれるようになったものについてのもので、個人の自己感覚がどのように発達し、維持されるのかということにかかわります。Kohutが主張するところでは、個人は、生まれたときから、他者と親密に結び付けられていて、他者が個人の適切な発達のために必要な情緒的栄養を確実に提供してくれると体験する必要があります。この自己対象的環境の中で得られる必須のニードは、以下のものを含んでいます。

 子どもが自分の達成を示したことに対する養育者の目の輝きなどを通して得られる、新しく広がっていく自己についての確証と承認

 理想化できる対象の強さや落ち着きと融合する体験

 人間どうしの基本的な類似性の体験

 Kohutによれば、自己対象ニードは決してなくなるものではありません。発達の初期の頃は、そのようなニードは、一次的な養育者によって満たされなければなりません。時間の経過と共に、そのようなニードを満たしてもらう相手は、兄弟姉妹、友人、教師、指導者、配偶者、子どもたち、そしてもちろん、分析家へとなっていきます。個人が他者から求めるもの、そして、個人が他者から応答してもらいたいと思う方法は、長い人生の中で変化していきます。自己心理学者の中には、この発達的前進を、「蒼古的な」自己対象体験から、より成熟した自己対象体験の形態へと進んでいくものと考える人もいます。

 第三の中核的な考え方は、精神分析的治療において共感が中心的な役割を果たすということにかかわります。Kohutが「相手になり代わった内省(vicarious introspection)」と定義した共感は、分析家が患者の情緒的世界の内側から患者を理解しようとする試みを意味しています。人間の体験や行動を決定するのは心的現実だという認識のもとに、自己心理学的探索は常に患者の自己体験の内側における視座からなされるものです。

 個人が、自己対象的環境が自分の中心的なニードを満たすことに失敗していると体験するとき、それは、多くの場合、共感的な理解の失敗によるものですが、個人は融和性や時間的安定性、及び/又は、肯定的な感情価を欠いた自己感覚を発展させる傾向にあります。個人は自分自身から遊離しているように感じたり、自分が誰なのか確信が持てなくなったり、一人で必要な行動を取れなくなったりするかもしれません。その人はまた、抑うつ的になったり、活力やエネルギー、目標の感覚や方向性を欠いたように感じるでしょう。親密な対人関係や社会生活は阻害され、それらから満足を感じることが出来なくなるかもしれません。

 したがって、精神分析的な関係において自己体験の修復や更なる発達が生じるような促進的環境を創ることは、自己心理学的なオリエンテーションによる精神分析的治療の焦点になります。共感や内省を用い、分析家はまた、適切な自己対象環境の欠落のために発展した人格構造や症状形成、適応不全を明らかにし、患者と共にそれをワークスルーしていきます。

 患者は、自己心理学的なオリエンテーションによる治療で、しばしば、心理的健康や活力の感覚がよみがえってくると体験します。患者は、自分の中核的な自己対象ニードが理解され、適切に反応してもらったと感じますが、それだけでなく、定期的に分析関係を断絶させるような誤解もまた明らかにされます。そのような関係の断絶が共感的に探索される中で、その体験の意味は、過去のトラウマを再体験することの患者の恐怖や、分析家との現在の体験と関連づけて理解されます。この断絶と修復のサイクルを繰り返し体験する結果として、患者の自己の発達が促進され、患者は豊で生産的な満足できる生活を送ることができるようになります。


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